理事長挨拶

日本生体医工学会 理事長 就任の挨拶

令和4年(2022年)6月の総会で、公益社団法人日本生体医工学会の理事長を拝命いたしました。就任にあたり、皆様に一言ご挨拶申し上げます。

日本生体医工学会は、医学・生物学と理工学が接することで生まれる研究分野に関係する研究者の集う場として昭和37年(1962年)に設立され、以来60年余りにわたって、本邦の生体医工学研究の発展を支えてきました。現在、本会を支えてこられた諸先輩が開発された多くの技術が医療機器として臨床現場に配され、医療機器を適切に整備・制御する医療職者である臨床工学技士によって診療に適用されています。

一方、近年生体医工学を含む本邦の科学技術の国際的プレゼンスの低下が叫ばれ、医薬品・医療機器についても「輸入超過」が強まっていることが指摘されています。加えて、基礎研究の成果を医薬品・医療機器へと昇華させる役割を担う臨床研究を取り巻く環境も大きく変化しつつあり、臨床研究の適切性と安全性を担保するための臨床研究法や、臨床情報の適切な取扱を求める個人情報保護法をはじめとする関連法規が目まぐるしく制定・改定されています。

これらの状況を鑑みて、本会では近年、オープンアクセスの英語論文誌 Advanced Biomedical Engineering(ABE)を創刊し、皆様に生体医工学分野の研究成果を国際発信して頂ける環境を整えるとともに、生体医工学シンポジウムにおける「論文指導になることを辞さない」丁寧な査読などの活動を通じて、若手研究者の皆様の研究活動の活性化を図って参りました。また、臨床研究法などの関連法規と生体医工学研究との関係性を整理する各種ガイドラインの整備などを、関係省庁等と調整を重ねながら進めて参りました。

私が理事長の席をお預かりしましたこの二年間、諸先輩方が積み重ねてこられたこれらの活動をしっかり継続することで、引き続き生体医工学分野の研究の活性化を図るとともに、臨床工学技士として既に現場で活躍しておられる皆様や、多くの若い力を生体医工学分野に誘うことで、生体医工学分野の教育・研究・事業に関わる全ての研究機関・企業の皆様にとって、「学会」という場が価値の高いものとなり、更に本邦の生体医工学分野の活動が発展して参るよう努めて参りたいと存じます。

会員の皆様におかれましては、是非闊達な意見を学会にぶつけていただき、また、 様々な行事に積極的に参加して頂いて、本会の活動の活性化に引き続きお力添えを賜りますようお願い申し上げます。また、多くの皆様が、本会の活動に新たに加わって下さいますことを心よりお願い申し上げます。

2022年9月吉日
日本生体医工学会 理事長
黒田 知宏